安すぎバイ!
2016/12/28(Wed)

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安くてうれしいもの:食べ物
安くてかなしいもの:小説などの設定


ということで終わらせるために自分でもかゆくなるような
無茶苦茶安い設定ばかり作ってしまって大恥ですが
でも一応予定通りに終わらせたのでよいとしてくれたらと。

「完璧でないと公開しない」なんてタイプではなく
「公開後の後悔で改稿」をモットーとするタイプなので
殴り書き状態ですが祝いめでたいすとーりーの
最終話をアップさせていただきます。

まあでも,「2014年の追い山での感動の記述」と
「貴緒衣ちゃんに梅の花がついていることの考察」
だけはちゃんとできた気がするのですがどうでしょうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 一人家に残った雄伊佐はどうなるかを心配に思っていたが,
しばらくして向かいの家から聞こえていた子どもの泣き声が消え,
静かになったと思ったら今度は親子の笑い声まで聞こえてきたので,
雄伊佐はほっとして床の中で体を楽にした。
そしてふと残してきた自分の子どもことを思い出した。

『妻の実家はみなさん十分な暮らしができているから…
はやり病にさえかからなければ皆きっとなんとかやって
いってくれるだろう…だからこそ,俺が出てきたのも
きっと正しかったはずだ…
では…木黄衣は…木黄衣にとっては何が…』
と考えたところで木黄衣が戸を開ける音が聞こえた。

「おお,どうだった。」と雄伊佐が聞くと,木黄衣は
今みてきた回復に少し興奮しながら,
「ええ,甘露水を飲ませるとほんとすぐに回復して。
ほんとうにありがたい。」と笑顔で答えた。
その表情をみて,木黄衣も本心で甘露水を子どもに
あげたことを喜んでくれたことが分かったので,
雄伊佐は安心することができた。
 
その日は雄伊佐もゆっくり休めて容態もよかったので,
眠りにつく前に二人でゆっくり話をすることができた。
一緒に育った子どものころの話,それぞれのこれまでの話,
さまざまなことを話した。そしていつも眠るくらいの時間に
なったころ,雄伊佐が静かになった。安定した呼吸の音が
聞こえていたので,眠ったのだろうと木黄衣が思ったころ,
起きていた雄伊佐は唐突に木黄衣に聞いた。

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「なあ,掛け鯛って知っているか?」
「どうしたのいきなり鯛の話?ええ,結婚とかのお祝いに使う,
鯛を夫婦にして提げるあれでしょ。」
「そう,それ。俺は鯛を中心とした漁師だったから掛け鯛を
作ることもあって…お前,鯛の雄と雌の違いって分かるか?」
「大きな鯛なら捌けば分かるらしいけど…小さいのしか
料理したことないからあんまり考えたことがなかったわ。」
「日頃ずっと接していると,顔つきだけでも分かるようになるんだが…
で,やはり夫婦の鯛だから雄と雌を選んで掛け鯛を
作るんだけど,その時いつも”これって本物の夫婦である可能性って
あるのかな?”って思ってたんだよ。」
「鯛に“本物の夫婦”ってあるの?」
「鯛はつがいで暮らすって言われているから,
雄と雌が順に釣れた時とかはもしや…と思いはするけど,
陸に揚げる時にはごちゃまぜになっているから
もう分からなくて。だからいつも掛け鯛を作る時に
”間違っていたら御利益なくなるかな?”って思ってたんだ。」

それを聞いた木黄衣は「意外と繊細なんだねえ。」と明るく笑って,
「あなたが,いい鯛だって思った2匹を選んだんだから,
それでいいんじゃない。それにお宮さんで願をかけてくれるのだから,
そこで御利益が出るのだろうし。」と言った。

それを聞いた雄伊佐は,「そうだよな。それでよいよな。」
と言って眠りについたので,木黄衣もすぐに眠りについた。


「火事?」と驚いて飛び起きた木黄衣の視界には,
いつもと変わらぬ暗い部屋が拡がっていた。
ただ一つ違うのはすぐそばの雄伊佐がこれまでにない,
それこそ火事のような熱さでうなされていることであった。

「すまない…起こして…あっ…しまったな…熱い…水を…。」
のどに絡む熱い息をはき出すのさえ大変そうな雄伊佐の声を
木黄衣はいたたまれない気分で聞くしかなかった。
なんとか熱をさまそうと木黄衣は水に濡らした手拭いを雄伊佐の
体にあてがったが,みるみるうちに手拭いは熱を帯び乾きはじめて
手拭いは体を冷やす役割を果たすことができなくなっていった。

「こんな薄い布ではすぐに…。」と思った木黄衣は井戸に走り
何倍も水をかぶって痛くなるまで自分の体を冷やした。
そして雄伊佐が止めるのも聞かずに雄伊佐の体に
自分の体を重ねて雄伊佐を冷やしたので,
うなるだけしかできなくなっていた雄伊佐は少し
落ち着きを取り戻すことができた。

「木黄衣…ありがとう…体が楽になった…。
でも,もう俺は……。なあ,俺がまだ意識がある内に,
お前の,神楽を舞う姿をみせてくれないか。」
「神楽…神楽って言っても私が舞ってきたのは…。」
と口にして,木黄衣は自分が正式な神楽を舞うことが
許されない存在であり,芸としての舞のみを生業としてきた
ことでためらったが,どんどん荒くなる息で雄伊佐が
みせてくれと言うので意を決して上体をあげた。

 もとより狭い室内のため,正式な神楽を舞うことはできず,
最期を迎える雄伊佐の体から離れたくなかった木黄衣は,
上体のみで神楽を舞うことに決めた。

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鳥の声に気づけば近づく夜明けに部屋の中も少し明るんで,
高く掲げられた木黄衣の細い腕が漏れ差す朝の光の中に
白く浮かび上がっては闇に消え,たおやかな腕の動きの中で
キリと見据えた視線はまっすぐに空の向こうをつかんでいる。
姿勢を移す衣音に,めぐらす腕が空を切る音が部屋に響き,
宮から聞こえる朝の太鼓の音が部屋に響いた時,
雄伊佐は静かに息絶えていた。

* * *

 できる限りの雄伊佐の供養を終えたころには,
木黄衣も流行病に冒され熱にうなされるようになった。
既に雄伊佐との家も引き払い,後は野辻で死を待つしか無い
までになった木黄衣は,最期にと櫛田宮を目指して歩いていた。
しかし,まだ過ぎぬ夏の暑さと熱病の熱さが重なって,
木黄衣は境内に入るあと少しのところで倒れてしまった。

かろうじて残るもうろうとした意識の中に雷の近づく音が
聞こえた。あたりはみるみる厚い雲で覆われ始め,
大粒の雨が木黄衣に降りかかった。
熱い体には夕立もありがたいと木黄衣が目を空に向けると,
夏だというのに梅の花が咲き乱れていた。
夏に咲く梅の種類もあるのかと,あたりを見渡してみると
あたりすべての梅の木が満開になっていて,
雷雨がやんだと思うとあたりに梅の香が満ちあふれはじめた。
そしてすべての花びらは宙に舞い,
かぐわしき梅,熱冷ます雪,人癒やす露として
木黄衣に降り積もり続けた。

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* * *

「お母さん,櫛田宮の前にすごい立派な牛車が。」
「ほんとだ,すごいね。おそらくは宋からの偉い人がお乗りだよ。
ほら,物見からみえる法衣のすばらしいこと。
ありがたいものをみせてもらったね。
さて,お家に帰って,おいしいもの食べよう。」

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